先日、娘の学校が親を対象として開催した『学校でのいじめに関するオンライン・セミナー』に参加しました。セミナーの冒頭で、フランス政府によるいじめ対策の動画が流され、心を揺り動かされました。
動画ではまず、学校のような会場に大人6人が集まり、子どものいじめを想像して、その様子を演じる場面から始まります。「あ~、こういう意地悪をする子って、昔いたよね」と思いようなシーンがいくつも登場します。
それで終わりと思いきや、今度は会場に中高生のグループが入ってきます。その子達が、現代のいじめの様子を再現するのですが、これがまた見ているのが辛いほど、リアルな演技なのです。親たちの時代には存在しなかったSNS上のいじめもしっかりと描かれていました。
いじめをしている側の子、もしくはその予備軍にこの動画を見せれば、いじめという行為がどれだけ深く相手を傷つけるか、よく伝わるはずです。また動画の最初に大人を登場させることにより、問題の重要さを親にも強く訴えかけることに成功しています。この動画を作ったのはどの制作会社なのでしょう?すごい才能だなと感動しました。
いじめ対策として、フランス政府は週末やバカンス期間中も含め、年中無休のコールセンターを用意しています。学校の先生だけでは対応できないことも多々あるでしょうし、国が用意した専門のチームに手伝ってもらえる、といういじめ対策プログラム(pHARe)は、いじめ被害者とその家族にとって、非常に心強いシステムだと思われます。
フランスではいじめの加害者に対する罰則も、かなり厳しく定められておりまして、未成年だとしても13歳以上であれば、最大で5年の懲役と7500ユーロの罰金が課せられる可能性があります。いじめの加害者を強制転校させることも合法化されています。
フランス政府がいかに真剣にこの問題に取り組んでいることが伝わってきますね。このプログラムが導入されたのは2023年10月なので、まだいじめ改善の統計は出ておりませんが、刑罰の重さや、いじめ防止プログラムの充実度から、数年後には恐らくいじめ件数が減った、という嬉しいニュースが聞けるのではないかと期待しています。