まずは今回の東日本大震災で犠牲になられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。被災者の方々が一日も早く平穏な暮らしを手に入れられるよう心より願っております。

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、2週間以上経った今も未だに日本そして世界に大きな波紋を広げています。地震の翌週(3月14日の週)は、世界の株式市場にまさにパニック売りとも言えるような激しい暴落が起こりました。今回のコラムでは、様々なアセット・マネージメント会社や金融機関が出した地震の影響に関するマーケット・コメントをまとめてみました。

インベスコ投信投資顧問株式会社

3月14日にインベスコから出されたコメントには、日本回復に向けての力強い期待とエールが感じられます。インベスコは、日本が今後1~2四半期の間は購買力の低下や、電力不足などによる生産力の低下により苦しむだろうと予測していますが、1995年の阪神大震災の時のように日本が早い立ち直りを見せてくれるに違いないと考えています。東日本大震災前の日本経済は、アジア諸国と米国からの需要により景気を加速させていました。新興国経済の基盤が今後も強固であり、また米国経済の回復が続く限り、インベスコは日本市場の長期的な展望に関して悲観的になる必要は全くないと述べています。

アムンディ・アセット・マネージメント

アムンディのストラテジストであるボロヴスキー氏は、3月18日、投資信託情報サイトのSicavonlineに対して、今後、原発による大惨事が起こるか否かにより2つのシナリオが考えられる、と自らの見解を述べました。1つ目のシナリオである原発問題が無事に解決した場合は、1995年の阪神大震災後と同様、地震直後は日本のGDPはマイナスに陥るが、2011年後半からは復興に向けての活動のお陰でプラス成長を成し遂げるであろう、よって欧米経済に与える影響はさほど大きいものとはならない、というのがボロヴスキー氏の意見です。問題は第2のシナリオである「万が一、福島原発が第2のチェルノブイリとなってしまったら」という場合です。放射能の影響を受けた地域の生産体系は崩壊し、日本から部品を輸入している世界中に今以上の大混乱を巻き起こしてしまう。更に、東京にまで放射能の雲が押し寄せてきたとしたら、それこそ計り知れない経済的ダメージがある、という悲観的な意見がボロヴスキー氏の考える第2のシナリオなのです。この第2のシナリオの可能性を踏まえてこそ、地震の後このように株式市場に過度な売りが入った、と同氏は続けています。

カーミニャック・ジェスチョン

フランスの独立系アセット・マネージメントの会社で名実共にNo1の実力を持つカーミニャック・ジェスチョンから3月17日に送られてきたコメントは次のようなものでした。今回の日本の悲劇は世界の金融市場において非常に感情的な反応を巻き起こし、地震後のマーケットの変動率は非常に激しくなっています。日本が再建にどれだけの時間とお金を費やすことになるのか現段階では分かりませんが、それでも現状において、カーミニャック・ジェスチョンでは東日本大震災が世界経済の成長に大きな影響を与えるとは考えません。日本の状況がひとまず落ち着いたら、近い将来マーケットはリバウンドするでしょう、というのがカーミニャックの意見です。

フランクリン・テンプルトン・インベストメンツ

世界最大級の独立系アセット・マネージメント会社のフランクリン・テンプルトン・インベストメンツは3月17日、業界向けのレポートで次のように地震の影響を語りました。今回の震災によりインフラ、電力、工業生産が大きなダメージを受けてしまったため、短期的には非常に厳しい状況を強いられることでしょう。しかし住宅を始めとする再建活動により、数ヶ月以内にはその被害を取り戻せることと考えます。また今回の悲劇が世界経済を危機に落とし入れるとは考えていません。世界経済の需要への大きな影響はないとしても、生産の滞りにより日本国外に価格上昇圧力がかかってしまうかもしれません。しかしながら世界経済はそれらのショックを十分に吸収できる力がありますので、短期間の混乱で済むと考えます。これらの想定は全て「原発の冷却ができるのであれば」という仮定の元にあります。その仮定が崩れると、世界経済に対する影響はもっとずっと深刻なものになってしまいます。

モルガン・スタンレー

最後にモルガン・スタンレーから3月23日に送られてきたマーケット・レポートをご紹介しましょう。そのレポートによると、今回の悲劇により日本のGDPは本年度1~3%押し下げられることが予想されますが、世界経済に与える影響は極めて限定的であるという見解が示されています。地震が起こった時の世界経済は比較的堅調だったということ、またG7各国の円高阻止協調介入に見られるように世界の金融政策担当者達が日本がこれ以上の困難に見舞われないようにサポートしていることなどが原因です。ただし、日本の生産性の低下、交通網や輸出の滞りが、世界のサプライ・チェーンにおいてどれ程の影響を与えるのか、ということは、現段階でかなり不透明である、という懸念も示唆しています。


3月21日、投資家ウォーレン・バフェット氏は東日本大震災について「もし私が日本株を持っていたとしても、絶対に今は売らないだろう。このような時期はむしろ買いのチャンスだ」と語りました。日本株がまさに大暴落をした大震災の翌週は、海外投資家が1兆円近く日本株を買い越していたことが、東京証券取引所の統計で明らかになっています。

原発問題が解決していない現状では、まだ今後も世界の株式市場に新たな不安を巻き起こしてしまう可能性も存在します。しかしながら各国の金融機関のコメントからは「日本なら絶対に立ち直れる。大丈夫だ!」といった期待が強く感じられます。世界をあっと言わせる程のスピードで、日本が今回の悲劇から立ち直ってくれることを心から願っています。