今回のコラムでは気になる「年金」がテーマです。フランスにこのまま暮らし続ける日本人の方々が、果たして年金をもらえるのか、どうやったらもらえるのか、についてお話ししていきます。

1.年金をもらえるかどうか

日本の年金制度から将来老齢年金を受ける為には、原則25年以上の年金加入期間が必要です。「どうしよう、25年間も日本で年金を払ってこなかった!」という方もご安心を。日本国籍を有する20歳から60歳までの間に海外で暮らしていた期間は「合算対象期間(カラ期間)」として年金加入期間に加えることが出来ます。以下の3つの期間を合わせた年数が25年以上であれば、将来、老齢年金を受け取ることが出来るのです。

● 国民年金保険料納付済期間
● 国民年金保険料免除期間
● 合算対象期間(カラ期間)

もちろん「私はこの期間、海外で暮らしていました」ということをきちんと証明できるようにしておかなくてはなりません。ビザやパスポートの入国スタンプなどで証明することも出来ますが、一番確実な方法は市区町村役場で海外転出届けを提出しておくことでしょう。

2.年金額をふやす

年金保険料を支払わずに海外で暮らしていても、その期間はカラ期間として考慮され、年金を受け取る権利を得ることができるということが、前章でわかりました。それでは受け取れる年金額はどうでしょうか。海外に滞在していた期間も、年金保険料を支払ったものとして計算してもらえるのでしょうか?答えはノーです。2006年3月現在、65歳からもらえる老齢基礎年金の計算式は次のようになっています。

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海外にいて保険料を払わない期間が長くなると、65歳から老齢年金をもらえても、その年金額はかなり減額されたものになります。将来少しでも多く年金を受け取れるように、保険料を払っておきたいという方は、国民年金に任意加入するといいですね。その場合、日本で最後に住所があった市区町村役場の国民年金課で、国民年金第1号被保険者として加入手続きをする必要があります。日本国内に住む親族などに手続きをお願いするか、もしくは「日本国民年金協会」(代行手数料なし)に依頼する方法もあります。

3.外国籍を取得した場合

結婚などにより外国籍を取得した場合、年金加入期間が25年に満たないときは脱退一時金を請求することができます。しかし、障害基礎年金を受けたことがある、などの場合は支給されません。請求書は、社会保険事務所、社会保険事務局の事務所または年金相談センターなどに用意されています。脱退一時金は、外国籍を取得した日、または外国籍を取得した後、日本国内に住所を有しなくなった日から2年以内に手続きをしないともらえなくなってしまうので、注意が必要です。

4.年金をもらうための手続き

年金は65歳になったら自動的に振り込まれるものではありません。自分から「年金をください」という手続きを取らないと、もらえないのです。その手続きを年金の裁定請求と呼びます。どこに請求するかは、日本で最後にどの公的年金に加入していたかによって違ってきます。下の表をご参考ください。

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5.海外で年金を受け取るには

まず市区町村役場で「海外転出届」を提出する必要があります。その後、社会保険事務所でもらえる「年金の支払いを受ける者に関する事項」という用紙に必要事項を記入し、社会保険業務センターへ送付します。年金の振込口座は海外の金融機関も指定することができます。その後、年に1回、「現状届」が海外の住所に届きますので、現地の領事館で在留証明書を発行してもらい、「現状届」とともにに社会保険業務センターにに送付します。この「現状届」を提出しないと、年金はストップしてしまいますので、くれぐれもご注意を。

6.年金にかかる税金

それでは今度は年金にかかる税金について見てみましょう。まずは日本で年金を受け取る場合、原則として、年金支給額から各種控除額(年齢・家族構成によって変わってきます)を差し引いた額に10%をかけた税額が源泉徴収されます。ただし年金年額が158万円(65歳未満では108万円)未満の人は源泉徴収されずに済みます。海外で年金を受け取る場合の税金はどうなるのでしょうか?フランスと日本は租税条約を締結しています。租税条約締結国に住む人の場合「租税条約に関する届出書」を社会保険業務センターに提出すると、日本での年金への所得税は免除され、滞在国の税法にて現地で課税されます。ただし公務員など共済年金に加入している人の場合は、たとえ海外で年金を受け取っていたとしても、日本で課税となります。

7.社会保障協定

2005年2月にフランスと日本の間で社会保障協定が締結されました。現在、発効に向けて準備中です。この協定が発効されると、両国の年金制度への二重加入を防ぎ、また保険期間の通算が可能になります。例えば、この協定が実際に発効されると、フランスに5年以内の駐在員として派遣された方は、日本の年金保険料のみを支払い、フランスの社会保険制度に加入する必要がなくなる、というものです。この社会保険協定については、発効後に改めてこのコラムで取り上げる予定です。


引退後の第二の人生のプランの中で、年金は大きな位置を占めます。何歳からいくらもらえるのか。年金を更に増やすために、公的年金に頼るのか、私的年金を始めた方がいいのか。はたまた自己資産を運用してまかなうのか。更には日本で受け取るのか、海外で受け取るのか、など考えなくてはならないことがたくさんあります。前もってきちんとプランニングをして、豊かな第二の生活を迎えたいものですね。