フランスでは今年から、銀行が顧客に対して前年度の手数料明細を渡すことが義務付けられるようになりました。コラムをご覧の皆様の中にも、今年に入ってから、手数料明細を受け取られた方が多くいらっしゃることと思います。自分が利用したサービス一つ一つに手数料を払っている人もいますが、フランスでは銀行顧客の半分以上が『手数料パッケージ』を利用していると言われています。パッケージにした方が、手数料が安く済むのでしょうか?実際のところ、銀行サービスを頻繁に利用しない人にとっては、かえってその料金が高くつくことが多いようです。一体、手数料パッケージにはどのようなサービスが含まれているのでしょうか?手数料パッケージが自分にとってお得かどうかは、どうすれば分かるのでしょうか?
手数料パッケージとは何か?
手数料パッケージの中には銀行が予め『顧客はこのようなサービスを利用するだろう』と想定したいくつかの銀行サービスが含まれています。パッケージを利用すると、顧客はそれらのサービスを利用するしないに関わらず、毎月定期的にパッケージ料金を支払うことになります。例えば、BNP Paribasが提供する手数料パッケージは『Esprit Libre』、LCLでは『Formule ZEN』、ソシエテ・ジェネラルでは『Jazz』という名前が付けられています。各行、パッケージを3~5段階のレベルに分け、それぞれのレベル合わせたサービス内容を組み込んでいます。どの銀行の、どのレベルのパッケージにするかで値段はかなり違いますが、年間でおよそ50~150ユーロ、というのが手数料パッケージの相場です。
パッケージに含まれているサービス
ここではソシエテ・ジェネラルの手数料パッケージを例に取って詳しく中身を見てみましょう。JAZZという名前のソシエテ・ジェネラルの手数料パッケージでは、利用するカードの種類(ゴールド・カードにするか、通常のVisa/MasterCard付きのデビット・カードにするか、など)により、金額を変えています。また16歳から25歳の顧客に対してはPACK JEUNESという名前で別のパッケージ商品を用意しています。通常のVisa/MasterCard付きのデビット・カードを利用する人が、JAZZを利用した場合、その料金は2009年3月5日現在、月額で7.80ユーロ、つまり年額で93.6ユーロになります。さてJAZZにはどのようなサービスが含まれているのでしょうか?
驚くほど沢山のサービスが含まれていますね。しかし、よく見てみると、あまり必要ではないと思われるサービスまで混在していることが分かります。例えば4番の『デビット・カードと小切手の盗難・紛失時の差し止め』ですが、このような事態が毎年起こってしまう、という人はほとんどいないのではないでしょうか?また14番の『銀行発行の小切手』も毎年3回も利用している人は少ないと思われます。ここで言う銀行発行の小切手(CHEQUE DE BANQUE)とは、顧客の依頼により銀行が銀行名義で発行する小切手のことで、車や不動産の購入など非常に高額の支払いの際に利用されるものです。通常の小切手ではなく、敢えて銀行発行の小切手を毎年3回発行するための料金がこの手数料パッケージには含まれてしまっている、という訳です。16番の『ソシエテ・ジェネラル以外の銀行のATMで現金を引き出す際の手数料が月8回分無料』ですが、通常ですと月4回分しか無料ではないところ、JAZZを利用すると月8回まで系列銀行外のATMでお金を引き出しても手数料がかからないことになります。
手数料パッケージの価値
さて、この手数料パッケージ内に入っている個々のサービスの単価はいくらなのでしょうか?単価が分かるものは単価を、そうでないものは割引価格(または%)などを表示しました。
単価が分かるサービスの料金を単純に合計すると192.9ユーロになります。パッケージにすると年額93.6ユーロで済みますので遥かにお得ということになります。但しそれはあくまでも『パッケージに含まれているほとんどのサービスを利用した場合』です。もし上記の中で利用していないサービスが多く存在しているとしたら話は別です。利用していないサービスに対する料金を、毎月払い続けているとしたら、それはかなりの無駄遣いですね。
現在利用しているパッケージが、自分にとって価値のあるものかどうかを確かめるには、少々面倒ですが、上記のように内容を一つ一つ確認する必要があります。つまり、まずは手数料パッケージに含まれるサービスをリストアップし、その中で自分が実際に使っているものを確認します。次に、自分が使っているサービスが単価でいくらになるのか、また、利用頻度を考慮すると本来、年間でいくらの手数料を支払うことになるのかを計算します。そして最後に、個々に利用する場合と、手数料パッケージの料金を比べることによって、自分にとってどちらがお得かが分かるのです。
いつまで続くか分からない世界的景気減退の真っ只中、少しでも無駄な出費を抑えるように心がけたいものです。この機会に、銀行手数料を払いすぎていないかどうか、チェックしてみるのもいいかもしれませんね。