PERPとは、将来の私的年金を準備するための商品です。運用は自己責任で行いますので、将来受け取れる年金額は運用実績によります。公的年金受給開始年齢(2014年10月現在では62歳)までお金を引き出すことができない、という制約がありますが、その代わり積立期間中に減税効果を得られる、という果実が用意されています。成人であれば、誰でも何口座でもPERPを開設することができます。専業主婦も、もちろん口座開設できます。具体的な仕組みについて詳しく見てみましょう。

設立期間中の税制の恩恵

PERPに入金した金額は、所得控除を受けることができる(つまり、その年の課税所得金額から掛け金を減額することができる)という特典があります。但しPERPで課税所得額から控除できる金額には次のような上限が定められています。

10%の所得控除を引いた後の前年度の職業所得の金額が
→ 37 032ユーロ以下の場合、3 703ユーロまで控除できる。
→ 37 032ユーロ超の場合、10%の所得控除を引いた後の職業所得の10%に当たる金額まで控除できる。但し、最大でも29 626ユーロまで。

※上記の下線部分の金額は2014年度の数値です。この数値は毎年少しずつ上昇します。

また利用しなかった上限枠は翌年以降に繰り越されるため、直近3年分の未使用枠を一気に利用することも可能です。納税証明書の最後に記載されている “PLAFOND POUR LES COTISATIONS VERSEES EN 2014″の数値が、その人にとって節税効果を得ながら、今年PERPに入金額できる最大金額となります。

入金方法

PERPには毎月、または3ヶ月毎など定期的に積み立てをしてもいいですし、または好きな時に自由な金額を入金する、という形にすることもできます。毎年、納税証明書の金額を確認してから、控除できる最大の金額を入金する、という人もいます。「年金受取り時まで必ず毎年、積立てを続けなければならない」という義務がないPERPは、非常に柔軟性があり便利です。

どのように運用するのか?

入金したお金は金融機関が予め用意した年金用の運用委託プランを選ぶこともできますし、自分自身で自由にファンドを組み込み運用していくこともできます。PERPの口座内で選べるファンド数には大きな差があり、10種類程度の品揃えしかない商品もあれば、有名どころのファンドをずらり100種類以上取り揃えたり、フランス版不動産REITともいえるSCPIに投資できる商品もあります。

年金受取り開始前の不測事態

基本的にPERPに入金したお金は、公的年金受給開始年齢まで、引き出すことはできません。しかし例外として、配偶者またはPACSのパートナーが死亡した場合、身体障害者になってしまった場合、個人破産した場合など、非常事態が発生した時には、公的年金を受け取る年齢に達していなかったとしても、それまでに積み立てたお金をまとめて引き出すことができます。

万が一、PERPへの積立期間中、つまり公的年金受給開始年齢前に、契約者が死亡した場合、それまで積み立ててきたお金は予め契約者により定められた受取人に年金形式で支払われるか、または契約者の未成年の子供に対して25歳まで年金が出るようにするかを選ぶことができます。

年金の受取り

公的年金受給開始年齢に達した後に、PERPにそれまで積み立てたお金を年金として受け取れるよう金融機関に依頼することが可能になります。受取り開始時に、残高の20%までの金額なら、年金形式ではなく一括で引き出すことができます。しかし残りの80%は必ず年金として受け取らなければなりません。

とは言え、一生涯受け取れる『終身年金』という形だけでなく、自分の生死に関係なく一定期間は確実に年金が受け取れる『一定期間の確定年金』、更には高齢時の介護に備えて『徐々に金額が上昇していくタイプ』、反対に引退直後の元気な時期に多くの出費ができるように『当初5年間の年金を特に高額にした終身年金』など様々なオプションを提供する契約もあります。

PERPはどのような人に向いた商品か?

PERPの最大のメリットはずばりその節税効果にあります。所得税率が45%の世帯がPERPに10 000ユーロを入金すると、その節税効果は4 500ユーロにも上ります。所得税率が14% の世帯の場合、同じ金額を入金しても節税効果は僅か1 400ユーロです。PERPには『必ず年金として受け取らなければならない』(つまり途中でお金を口座から引き出すことはできない)という厳しい制約がありますので、それなりの節税効果を得られないのであれば、PERPではなく他の商品を利用して年金準備をされるのがいいでしょう。所得があまり高くない世帯が年金準備をする場合、いつでも引き出せるAssurance Vieの方がその融通性から考えて遥かに利用価値が高いと言えます。Assurance Vieの特徴を今一度ご確認されたい方は、当社のこちらのページをご覧ください。

PERP(PLAN D’EPARGNE RETRAITE POPULAIRE)を直訳すると『一般大衆の年金貯蓄プラン』になりますが、実際のところPERPは全く一般大衆向けではなく、高所得者層向けの商品という色合いが強いです。所得税率が41%または45%の世帯にとっては強力な節税ツールとなります。ちなみに所得税率が41%以上ということは、一人世帯であれば課税所得が71 397ユーロ以上、扶養家族のいないカップル世帯であれば142 794ユーロ以上、子供が1人いるカップル世帯であれば178 493以上、子供が2人いるカップル世帯であれば214 191ユーロ以上(いずれも2014年現在の数値)になります。高所得者が自らの年金準備を行う、または高所得者が専業主婦である自らの配偶者の年金準備をするためにPERPを使うと理想的です。日本と違い、フランスでは専業主婦は公的年金に加入していませんので、フランスの専業主婦の方々は何かしらの年金対策を行うことが望まれます。

PERPを選ぶ際のポイント

いざ「PERPを開設しよう」と決めた後は、「どの契約を結ぶか」を考えなければなりません。まず最初に確認すべき点は手数料です。口座に入金する度にかかる振り込み手数料を確認するのはもちろんのこと、契約によっては将来受取る年金額から毎回手数料が取られる場合もあります。高いところでは振り込み手数料を4~5%、年金手数料を3%も取っているようです。

年金の受取り方は様々なオプションを用意している契約の方が安心です。中には「PERPで積み立てたお金は将来、終身年金としてのみ受け取ることができる」という契約もありますので要注意です。また年金受取りを開始した後も、年金原資が運用され続け、その利回りを年金額に反映してくれるのかどうか、ということも大切なポイントとなります。これがないと年金受取り開始時に決定した年金額が固定されたまま、その後、何十年と同じ金額が支払われ続けることになってしまうからです。年金原資の運用益を反映してくれる場合は、受け取れる年金額が毎年徐々に上がることになります。

もしこれらのポイントを確認せずに、あまりよくないPERPの口座を既に開設してしまった、という場合もどうぞご安心を。PERPは他の金融機関にトランスファーすることができます。「口座を開設してからx年以内にトランスファーする際には、ペナルティーとして手数料をいただきます」という条項を付けている契約もありますが、そのような場合、別のもっといいPERPの口座を開設し、ペナルティー期間を過ぎた後に旧契約を新契約にトランスファーすればいいのです。PERPは長期に渡る契約ですので、いい契約を選ぶよう心掛けましょう。


今回は誰でも利用できるPERPについてご紹介しましたが、会社員が利用できるPERCOやArticle 83、自営業など非会社員として働く人のみを対象としたマドラン法に基づく私的年金商品も存在します。PERPとマドラン法に基づく私的年金商品は当社でも取り扱っておりますので、ご興味がございましたらお気軽にこちらまでお問い合わせください。財政難のフランスにおいても、日本と同じく、これからは公的年金だけで引退後の生活を賄うことは不可能です。しっかり準備をして将来の安心を手に入れられるようにしたいものですね。