リーマン・ブラザースが倒産し、シティ・バンクが救済され、と、これまで大手とみなされていた金融機関の経営も怪しくなり始めました。フランスではサルコジ大統領が「(金融機関の破綻のせいで)預金者が1ユーロたりとも失うことを私は認めない」と明言するなど、万が一の時には国が何とかしてくれる、ということが暗黙の了解になっているため、国民の間に不安が巻き起こることはありませんでした。とは言え、フランスの預金者の中には、今一度、自分の預金がどこまで保護されるのかについて確認しておきたい、という方も多くいらっしゃることと思います。本日のコラムではフランスの預金保険制度について取り上げていきます。

預金保証基金 (FONDS DE GARANTIE DES DEPOTS) は万が一金融機関が経営破綻に陥り、預金などの払い戻しが停止されるような事態が起こった時に、当該金融機関に代わり、預金者の保護を図るために設けられた機関です。フランスの預金保証基金は1999年に設立され、70 000ユーロまでを保証しています。この上限額は一人当たり一つの金融機関に対して適用されるもので、夫婦共同名義で口座を開いていたら、その上限は140 000ユーロになります。また子供名義で開設された口座があれば、その口座も子供一人当たり70 000ユーロまで保護されます。例えば破綻してしまった銀行に次のような残高を持つ家族の場合、預金保証基金により全額が保証されることになります。

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どのように預金保証基金が介入するのか?

金融機関が破綻した場合、金融機関を監督する組織であるCommission bancaireの要請に基づき預金保証基金が介入します。基金からの支払いは金融機関の破綻から最長6ヶ月の間に行われます。

預金保証基金の対象とならない金融商品

ほとんどの預貯金類は預金保証基金の対象となりますが、次に挙げる金融商品は保護の対象とはなりません。
-譲渡性預金
-欧州経済領域(European Economic Area : 略称EEA)以外の通貨の外貨預金。
-Livret A(現在のところ国により保証されている。全ての商業銀行でLivret Aの取り扱いが始まる2009年1月1日以降の取り扱いについてはまだ言及されていない)

外資系の銀行の預金について

ほぼ全ての外資系(フランス国籍以外)の金融機関は、フランスでの子会社としてフランスの制度に基づいて経営されているので、預金保険制度による70 000ユーロまでの保護も同様です。例えばフランスで営業を行っているHSBCはこの形態に該当します。しかしフランスで業務を展開している大手金融機関の中で次の2社は、保護される額が自国の預金保険制度に基づき決定されています。それはBarclaysとING Directです。Barclaysは英国の預金保護限度額の50 000ポンド(欧州中央銀行の12月11日付けのレートで換算すると55 593ユーロ)、ING Directは親会社がオランダの会社なので100 000ユーロ(今回の金融危機の後、保護上限額が大幅に引き上げられました)までが保障されます。

EU諸国の預金保護

今年の10月に金融危機への対処としてEUは、EU共通の預金保障額を従来の20 000ユーロから50 000ユーロへ引き上げました。それと同時に、更に自国の預金保険制度の上限を引き上げる国が相次ぎました。フランスは自国の上限額70 000ユーロを変更することはしませんでしたが、「万が一の場合、国が介入するのでフランスの金融機関の倒産はない」という政府からの発言がありました。次の表は2008年12月現在、EU共通の上限以上で自国の保護限度額を掲げている、EU圏内の国々の保護額を示しています。

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Assurance Vieの保護

当社でも取り扱っている、税制面で非常に優遇されたAssurance Vieはフランスで一番人気の金融商品です。元本保証で堅実に資産を増やしたい人、株・債券なども取り入れて積極的に資産運用をしたい人、双方に対応することができるマルチな商品Assurance Vieですが、万が一、運営している保険会社が倒産した場合には、銀行の預金口座同様、70 000ユーロまで保護が受けられます。流れとしては、保険会社が倒産すると、ACAM (AUTORITE DE CONTROLE DES ASSURANCES ET MUTUELLES)という保険会社を監視する組織が、まずは倒産した会社のAssurance Vieの契約を引き受けてくれそうな他の保険会社を探します。引き受け手が現れなかった場合に、保険契約者保証基金 (FONDS DE GARANTIE DES ASSURES) により保険会社ごとに一人当たり70 000ユーロまでが保障されます。


このようにフランスでは、預金保険制度の存在、並びに「もし問題が起こっても、国が介入するから大丈夫」という政府からの心強い呼びかけにより、預金者は非常に安心することができます。もちろん、預金保険制度や国の出番がないような、安定した金融市場が訪れてくれる事が一番いいのですが、その状況を望むのはまだ早すぎるかもしれませんね。