昨年、大暴落を経験したばかりの世界の株式市場は現在、急騰しています。その中でも力強い経済成長を見せている中国株の活躍には、目を見張るばかりです。今年に入ってから9月末までの、中国株インデックス『MSCI CHINA NR USD』 の上昇率はなんと既に49%。しかも今年の8月に大きな利益確定売りが入ったため、過熱感もだいぶ薄らぎ、更なる上昇に向けての勢いを感じます。来たる10月22日に発表予定の2009年第3四半期のGDPも、事前予想では前年比+9%前後になると見られています。来年には上海万博という大型イベントも待ち構えているので、まだまだ株価は上がると思う投資家たちも多いのではないでしょうか。フランスで販売されている中国株ファンドは現在、およそ40種類です。その多くは米系のアセット・マネージメントのファンドですが、フランスの会社が出している優秀なファンドも、もちろんあります。今回のコラムでは、フランス産の中国株ファンドをいくつかご紹介してみたいと思います。
中国株のマーケット
ファンドの説明に入る前に、まずは中国株のマーケットについてまとめてみましょう。一般的に、中国株ファンドというと、中国本土(上海市場と深セン市場)と香港市場に上場する株式をメインに投資しているものがほとんどです。上海市場、深セン市場では、それぞれの市場にA株・B株と呼ばれる株式が上場しています。A株は基本的には中国国内の投資家専用の株です。しかし2002年から「運用資産が100億ドル以上ある」など一定の条件を満たした外資系金融機関は、中国で認可されればA株の投資もできるようになりました。上海市場、深セン市場のもう一つの株、B株とはどのような株なのでしょうか?B株とは、元々は外国人投資家専用の株だったのですが、2001年から中国国内の個人投資家も取引できるようになりました。マーケットの規模ではA株が圧倒的大多数を占め、B株の上場銘柄数・時価総額は、A株の僅か10分の1程度でしかありません。一般的にA株の方が騰落率が高いため、外資系のアセット・マネージメントの会社がA株を取引する認可を受けているかどうかは、ファンドを選ぶ上で重要なポイントになります。これらのことも考慮しながら、具体的にいくつかのファンドの内容を見てみましょう。
フランス産中国株ファンド
1) SAINT-HONORE CHINE A
LCFロスチャイルド・グループの仏エドモンド・ロスチャイルド銀行のファンドです。香港市場、上海市場、深セン市場をメインに投資しています。1998年に創設されたこのファンドですが、2006年にようやくA株へ投資する認可を得ました。マーケットの状況に応じ、資産総額の60~100%が株式に投資されます。株式市場が下落している時は、資産総額の40%まで債券に回すことも可能です。ファンドの通貨はユーロですが、投資先は人民元、香港ドル、シンガポール・ドルなど複数通貨です。よってファンド・マネージャーは為替リスクを抑えるために為替スワップなどのデリバティブも利用しています。株式市場が暴落した昨年を除き、カテゴリー平均を大きく上回る成績を上げることが多い優秀なファンドです。
2) CAAM Funds Greater China C
香港、台湾、中国本土(A株も含む)の株に投資しています。ファンドの基準価格は米ドル建てです。ボラティリティーを比較的抑えながらも、マーケット上昇時にはカテゴリー平均以上の成績を出しているところは評価できますが、ファンドの半分近くが金融機関に投資されているのが少々気になるところです。2003年に設立された比較的新しいファンドですので、今後も好成績を維持できるのかどうかがポイントとなりそうです。
3) SGAM Fund Equities China A
ソシエテ・ジェネラル・アセット・マネージメントの子会社であるSGY アセット・マネージメントが、シンガポールで運用しているファンドです。上記のCAAM Funds Greater China Cと同様、香港、台湾、中国本土(A株も含む)の株に投資し、基準価格は米ドル建てとなっています。ファンドの歴史は、中国株ファンドのカテゴリーの中では比較的長く、既に13年以上が経過しています。また1996年の創設当時から同じファンド・マネージャーが投資運用しているので、経験豊かなファンド・マネージャーにお金を託す安心感があります。本年度に入ってからの成績が、あまり芳しくないのが残念です。
最後にこれら3つのファンドの成績を比較してみましょう。比較対象として、中国株ファンドのインデックスの一つ、MSCI China NR USDの騰落率を表の一番下に入れてみました。
フランス系の金融機関が運用している中国株ファンドの中でも、ひと際優秀な3つのファンドを取り上げましたので、ほとんどの年度においてインデックス以上の成績を収めていますね。本年度も9月末時点で上記、右側の数字を既に出していますので、もしかすると年末には2007年度を超えるような上昇率を記録するかもしれません。但し、昨年のような株式市場の大暴落が起こると、中国に限らず新興国の株ファンドは、その下落率も半端ではありません。中国の高い経済成長率の恩恵を受け、尚且つ、あまり自己資産をリスクにさらし過ぎないようにするために、あくまでも分散投資の一環として、資産のごく一部をこれらのファンドに投資するようにしたいですね。