不動産価格はここ数年上がり続けています。フランス全土を平均した、1平方メートル当たりの地価は、2006年上四半期で2,218ユーロ(現在のユーロ円為替レート144円で計算すると319,392円)になり、1996年から99.4%上昇したことになります。同期間の物価上昇率が約12%なので、不動産市場は現在バブルの状態にあると言えそうです。2000年の中古不動産価格を100とした場合、1991年から2006年の四半期までの価格は次のようになります。
【表1】 フランス全土の中古不動産価格の推移 (2000年の価格を100とした場合)
出典 : FNAIM(全国不動産連盟)
ちなみにパリ市内の不動産価格は現在どの位なのでしょうか?
居住用の中古物件の1平方メートル当たりの価格を区ごとに出したものがこの図です。
【表2】 2005年10月~12月のパリの居住用中古物件の価格
出典 : Notaires-INSEE
一番地価の高い地区は6区、続いて7区、5区となります。やはりパリは高いですね。
ご存知の通り、金利と不動産価格には密接な関係があります。最近の不動産価格の高騰にはどのような金利背景があるのでしょうか?日本の金利の低さには及びませんが、フランスも現在、史上まれにみる低金利時代です。下の表3「ローン金利の推移」をご覧ください。2004年にはローン金利の平均が4.3%となっていますが、これは1995年のローン金利の半分以下なのです。金利が下がると不動産市場はすばやく反応し、価格上昇を招きます。次にローンの期間を見てみましょう。
1995年にはローン期間は平均13年でした。2005年には16.5年になり、現在では日本のように30年、35年など長期ローンを提供する金融機関も出てきました。フランスのメディアでは「期間が長ければ、もっとローンを増やしても大丈夫」と安易にローンを組む人が増えている、とよく報道しています。
ローン金利の低下、そしてローン期間の長期化が、不動産市場の高騰に大きな影響をもたらしていることが、先ほどの表1とあわせて見ると、はっきり読み取れますね。
【表3】 ローン金利の推移
出典 : FNAIM(全国不動産連盟)
【表4】 ローン期間の推移
出典 : FNAIM(全国不動産連盟)
それにしても、低金利時代とは言え、こんなに地価が上がっても、なぜ需要も上がり続けているのか不思議ですよね。パリ第12大学のフェリアル・オロソ教授は、原因の一つとして、フランス人の生活体系の変化を挙げています。フランスではここ数年、高齢社会化と、離婚数の激増などによって、一人暮らしの人が増えています。一人暮らしの人が増える=世帯数が増える。そして、それぞれの人が自分の家を探しているので、不動産需要がさらに押し上げられるという訳です。具体的に数値を見てみると、1999年には一人暮らし世帯が740万人だったのに対して、2004年には840万人に跳ね上がっているのです。更に、別の理由として、裕福層がセカンド・ハウスを持ちたがったり、趣味や仕事の関係で2箇所の家を持つことになることがある、ということも挙げられます。こうしたフランス人のライフ・スタイルの変化も不動産業界のバブルを更に大きくしてしまっているようです。
今後のフランスの不動産価格はどうなるのでしょうか?2004年6月から米連邦準備理事会(FRB)はフェデラル・ファンド・レートを上げ続け、現在年4.75%です。グリーンスパン前FRB議長の後任のバーナンキ議長も、利上げの停止時期を探りつつも、相変わらず追加利上げの可能性を示唆しています。ヨーロッパもこの金利上昇の波に乗り始めました。欧州中央銀行のトリシェ総裁は2005年年末に政策金利を2%から2.25%に、そして今年の3月には2.5%に引き上げました。今年の年末までに3.25%までの上昇するのでは、と予想してるアナリストもたくさんいます。金利上昇が不動産市場に与える影響は確実にあるでしょうが、その影響がどの程度のものなのかはわかりません。金利が上がっても、同時に景気もよくなれば、需要は相変わらず上がるでしょうし、先ほどお話したフランス人のライフ・スタイルは、金利とは関係なく続きそうです。
ただ、2000年以降の上昇率は異常だと考える専門家も多く、「2006年の不動産市場も相変わらず上昇基調で進むが、上昇率は前年より穏やかになるだろう」というのが大方の見方のようです。今後の不動産市場、金利の動向とともに、じっくり見極めたいところですね。