フランスで所得を得られている方は、昨年分の所得について既に確定申告を済まされたことと思います。昨年の所得に対して課税される所得税の明細は8月半ばから9月にかけて、それぞれの世帯に届くことになります。
フランスで初めて働き始めた人は、就職した翌年の9月に所得税を一括で払わなくてはなりません。かなりの金額をまとめて払わなくてはならないので、フランスで働き始めたばかりの方は、翌年にいくら位、所得税を払うことになるのか、前もって計算し、その金額を準備しておくのがいいでしょう。
初めての所得税の支払いは一括支払いになりますが、2度目以降は支払方法を選ぶことが出来ます。どのような支払い方法があるのか、そしてどの支払い方がお得なのかを見て行きましょう。
(1) 3回に分けて支払う方法
2月、5月、9月に請求書が届くたびに、小切手を税務署に送る方法です。3回分の支払い金額はどのように決まるのでしょうか。冒頭で述べたように、昨年分の所得税の金額が確定するのは、明細が届く8月半ば以降です。2月、5月の段階では、まだ払うべき所得税の金額が分かりませんね。そこで、税務署は一昨年の所得に掛かった所得税(つまり昨年支払った所得税の金額)を参考にします。昨年支払った所得税の金額を3で割り、その3分の1の金額を2月、5月にそれぞれ払います。9月の支払い時の前には明細が届くので、昨年の所得に課税される所得税の金額が確定します。よって、9月にはその確定した昨年分の所得税から、2月、5月に既に支払った金額を差し引いた額を支払うことになります。支払期日は2月15日、5月15日、9月15日です。昔はこの支払方法しかありませんでしたが、現在は以下のような方法も取られるようになりました。
(2) 自動引き落としで3回に分けて支払う方法
基本的には上記の方法と同じですが、小切手を送るのを忘れてしまい、延滞料を取られることを防ぐ為に、自動引き落としにする、という支払方法です。自動引き落としを選ぶと、納税期日が、公示されている日にちの10日後になる、というメリットがあります。支払期日は2月25日、5月25日、9月25日です。
(3) インターネットで支払う方法
(1)の3回に分けて払う方法を選んだ人は、小切手を送付するのではなく、インターネットで支払うこともできます。先程の(2)自動引き落としの「納税期日が10日延長される」には及びませんが、インターネットで支払うことによって、納税期日は5日間延長されます。仏税務署のサイトから支払いの手続きをします。
(4) 毎月自動引き落とし
1月から10月にかけて毎月一定の金額を支払っていく方法です。月々の支払い金額は、前年に支払った所得税の金額を10で割り、その金額を1月から10月にかけて支払っていきます。昨年、急に年収がアップした人は、その増加分を11月また12月にも払うことになります。税金を支払っている人の60%以上がこの方法を選択している、という人気の支払い方法です。支払日は毎月の15日です。
さて、一通り所得税の支払方法を見ましたので、今度はどの方法がお得なのかを見て行きましょう。年に3回支払う方法を選べば、毎回の支払い日まで運用できる期間が稼げるので、月払いよりも得だ、という話をよく聞きますが、本当にそうなのでしょうか?
まず運用面から見て一番よくない方法はどれでしょう?答えは(1)の3回に分けて小切手で支払う方法です。期限までに忘れずに税務署に小切手を送らなくてはいけないという煩わしさもありますし、一番ネックなのは、他のどの方法よりも支払い期日が早いということです。早く支払ったところで何の特典もないのであれば、自分の手元で一日でも長く運用していた方が得ですので、この方法はNGです。
(3)のインターネットで払う方法も、(1)よりは5日間、支払期日が延長されますが、自動引き落としに比べると、早く支払わなくてはならないので、これもだめです。
それでは、残り2つ、(2)自動引き落としで3回に分けて支払う方法と、(4)毎月自動引き落としでは、どちらが有利なのでしょうか?
ここで一つ、シュミレーションをしてみましょう。仮に2004年の所得に対して支払った所得税の額が12,000ユーロだった人がいるとします。この人の2005年の年収は、2004年と同額でした。この人は2005年分の所得に掛かる税金(2006年に払うべき金額)12,000ユーロを、準備金として2006年の始めに既に用意しておきました。仮に税金引き落としの日まで1日も無駄なく2%で運用できるとします。この12,000ユーロから生み出される運用利益を、月払いと3回払い(共に自動引き落とし)2つのケースで比べてみると、次の表のようになります。
表の右側の年間運用益の合計を見ると、3回払いのほうが僅かに有利とはいえ、その差は微々たるものです。つまり、この2つの方法は運用面において、ほとんど同じであるという訳です。毎月、少しずつ支払っていった方が、資産のやりくりがしやすい、という方にとっては、毎月引き落としが好ましいですが、これは個人の好みによるところですね。
最後に 20ユーロの所得税減額の特例について一言。確定申告をインターネットで済ませて、尚且つ、上の(2)、(3)、(4)のいずれかの支払方法を選んだ場合、支払うべき所得税額から20ユーロが減額されます。これはぜひとも利用したいサービスです。
結論として、所得税を支払う場合、年3回、または毎月の自動引き落としで支払い、更に確定申告をインターネットで行い20ユーロ節約する、というのが一番いい方法だと言えそうです。
ちなみに現在、年3回払いを選択している人が、毎月の自動引き落としに変更したい場合、6月30日までにインターネットで申請すると、7月からすぐに毎月払いにすることが可能です。7月1日以降に手続きをすると、毎月の自動引き落としが開始するのは来年以降になってしまいます。